ASME BPVC Section V 2025改訂:2026年1月から義務適用、NDT技術者が押さえるべき変更点
非破壊検査の国際標準を定めるASME BPVC(ボイラー・圧力容器規程)第V章が2025年に改訂され、2026年1月1日から適用が義務化された。構造の大幅な再編とデジタル検査技術への対応が柱となっており、国内の製油所・化学プラントの検査業務にも直接影響する内容だ。
ASME BPVC Section V 2025:何が変わったか
2025年版の最大の変更点は、「製造時NDE」と「供用中NDE」の正式な分離だ。従来は同一章内で混在していた両者を、ASME は今回の改訂で独立した技術領域として明確に位置づけた。供用中NDE(In-service NDE)は新設のSubsection Cに集約され、製造時の検査基準とは別の体系として管理される。
また、Full Matrix Capture(FMC)がArticle 4からArticle 3へ移管されるなど、フェーズドアレイUT・TOFD・デジタルラジオグラフィといった先進的検査技術の位置づけが整理された。これにより、自社のNDE手順書でアーティクル番号を参照している場合はアドレスの更新が必要となる(技術的妥当性への影響はない)。
出典:ASME – BPVC Section V: Nondestructive Examination (2025) / iFluids – ASME BPVC 2025: Section VIII Changes Engineers Must Know
人材資格基準の更新:ASNT TC-1A・CP-189 2023年版を正式採用
2025年版Section Vは、NDT技術者の資格・認定基準としてASNT SNT-TC-1A(2023年版)およびASNT CP-189(2023年版)を正式に採用した。これは、NDT技術者の認定プログラムが最新の知見に基づいて更新されることを意味する。
SNT-TC-1A は1988年にVT(目視検査)を正式なNDT手法として初めて採録した規格であり、その後35年以上にわたって改訂が重ねられてきた。2023年版では、デジタル記録・AIによる自動評価補助といった現代的な検査環境への対応が盛り込まれている。
出典:OneStopNDT – ASME Section V Overview / CEI – Webinar Recap: 2024–2025 Code Changes (ASME, AWS & More)
適用期限と実務対応のポイント
2025年版ASMEは2025年7月1日発行、2026年1月1日より義務適用となった。ASMEの認定取得者(Certificate Holders)は、この期限までにQAマニュアルの更新とサイト内への最新版の備置を完了させる必要がある。
実務的に対応が求められる主な事項は以下のとおりだ。
- NDE手順書のアーティクル番号更新:FMCをはじめ移管された手法について、手順書内の参照番号を新しいSubsectionに合わせて修正する。
- 供用中NDE計画の体系整理:Subsection Cの新設により、製造時検査と供用中検査の計画書・記録を分けて管理する運用が求められる。
- 技術者資格の確認:ASNT 2023年版に基づく資格要件に照らして、現場技術者の認定状況を確認する。
出典:Accuris – ASME BPVC.V-2025 / Publications Office – The Engineer's Guide to BPVC.V (2025 Edition)
国内プラント検査への示唆
日本の製油所・化学プラントは高圧ガス保安法やコンビナート等保安規則に基づく法定検査が主軸だが、国際的な設備や外資系オーナーが関与する案件ではASMEへの準拠が要求されるケースも多い。今回の改訂で注目すべき点は次の2つだ。
- 供用中NDE の独立化:定修(ターンアラウンド)ごとの検査を「製造時基準」ではなく「供用中基準」として管理する考え方が国際標準の主流となりつつある。国内でも保全計画の体系化に向けて参考となる視点だ。
- デジタル検査記録への移行:ASNT 2023年版が対応するデジタル記録・AI補助の流れは、国内の検査記録管理にも波及してくる。紙ベースの記録から脱却し、データとして蓄積・活用できる体制づくりが競争力を左右する。
参考文献・情報源:
