分布型光ファイバセンシング(DFOS)による配管連続監視——AE法の次に来る運転中モニタリング技術【2026年最新動向】
前回紹介したアコースティックエミッション(AE)法によるタンク底板の運転中モニタリングに続き、今回はプラント配管の連続監視でいま急速に普及しつつある「分布型光ファイバセンシング(Distributed Fiber Optic Sensing:DFOS)」を取り上げる。AE法が点・面の音響検出に強みを持つ一方、DFOSは1本の光ファイバを数十km単位で「1本の連続センサー」に変える技術で、配管全長をすき間なくカバーできる点が革新的だ。2025年以降、海外の精製所・ガスパイプラインで実装が進んでおり、オンラインモニタリング時代の中核技術として注目されている。
DFOSとは何か:DAS・DTS・DSSの3本柱
DFOSは測定対象によって大きく3種に分類される。DAS(Distributed Acoustic Sensing)は音響・振動を、DTS(Distributed Temperature Sensing)は温度分布を、DSS(Distributed Strain Sensing)はひずみ・変形を、それぞれ光ファイバ全長にわたって取得する。DASはコヒーレントOTDR(C-OTDR)、DTSはラマン散乱光の解析(ROTDR)を利用する方式が一般的だ。いずれも1本のファイバケーブルから数万点の仮想センサーを実現でき、最大200km程度まで計測可能とされている。
配管漏洩検知における最新研究(2025年)
2025年にMDPI Sensors誌で発表されたガスパイプライン漏洩検知の実験研究では、21mの鋼管供試体に長さ1mの試験区間を設け、¼〜1インチの漏洩孔径、上面・側面・底面の方位、流速2〜18 m/sという多様な条件でDASの検出性能を評価している。結果、漏洩検出性は流量・漏洩孔サイズ・配管設置条件・ケーブル種別が複雑に相互作用することが判明し、特に配管内部に敷設した黒色・フラット型ケーブルが高流速・大孔径・底面漏洩に対して高い感度を示した。従来のスマートPIGで検査できない「アンピギャブル配管」への適用が期待されている。
精製所・石油化学プラントでの実装
ドイツのAP Sensing社が提供するパイプラインモニタリングソリューションは、漏洩検知・位置特定、リアルタイムPIG追跡、第三者侵入検知(TPI)、ブロック弁ステーション・精製所・処理プラント・貯蔵施設の監視までカバーする総合プラットフォームとして海外で導入実績を積んでいる。光ファイバを配管に沿わせる、あるいは同一溝に敷設するだけで継続監視が可能なため、大規模なセンサ設置工事を伴わない点が実装の後押しとなっている。
AI統合と市場動向
Frontiers in Big Data誌(2025年)に掲載された研究では、DTSとDAS(振動)ファイバ信号をマルチモーダル融合し、機械学習モデルで石油パイプラインの漏洩をインテリジェント検出するアプローチが報告されている。温度異常と音響異常を同時に監視することで、単独センサでは検出困難な微小漏洩・早期兆候の識別精度が向上する。市場面でもFiber Market Insightsは光ファイバセンシング市場が2026年までCAGR10.4%で成長すると予測しており、石油・ガス分野がその主要な牽引役と位置付けられている。
国内プラントへの適用の課題
日本国内の石油・化学プラントでは、光ファイバセンシングは橋梁・トンネル等のインフラ分野で先行しており、プラント配管への本格適用は緒に就いたばかりだ。課題は既設配管への後付け敷設のコスト・耐環境性(高温・蒸気・耐薬品)・保守点検体制の確立である。ただし、AE法による局所モニタリングと、DFOSによる全長連続監視を組み合わせることで、点検員が入れない高温配管・架空配管・地中埋設配管のブラックボックスを減らす現実的な選択肢として期待されている。当社ではVT・UTなどの従来検査と、これら新しい運転中モニタリング技術の知見を組み合わせ、設備健全性評価の精度向上に努めていきたい。
まとめ
DFOS(DAS/DTS/DSS)は、1本のファイバで配管全長を連続監視できる「線のセンサ」として、従来の点センサ・定期検査の限界を補完する技術である。2025年の最新研究ではAI融合による漏洩検出精度向上が進み、海外精製所では実装段階に入った。AE法とDFOSはそれぞれ得意領域が異なる相補的な関係にあり、次回以降は両者を統合した「マルチセンサ型オンラインモニタリング」の事例をさらに掘り下げていく予定だ。
参考資料・出典
- MDPI Sensors「Leakage Detection Using Distributed Acoustic Sensing in Gas Pipelines」(2025年)https://www.mdpi.com/1424-8220/25/16/4937
- Frontiers in Big Data「Intelligent leak monitoring of oil pipeline based on distributed temperature and vibration fiber signals」(2025年)https://www.frontiersin.org/journals/big-data/articles/10.3389/fdata.2025.1667284/full
- IEEE Xplore「A Review of Distributed Fiber–Optic Sensing in the Oil and Gas Industry」https://ieeexplore.ieee.org/document/9652039/
- AP Sensing「Pipeline Monitoring | Fiber Optic Leak Detection」https://www.apsensing.com/en/application/process-automation-and-pipeline-monitoring/pipeline-monitoring
- 株式会社レーザック「光ファイバ分布型振動センサ(DAS)-技術原理」https://lazoc.jp/technical/das/
- ケイエルブイ「光ファイバセンシングの種類と採用事例」https://www.klv.co.jp/corner/fiber-optic-sensing.html
- ACS Omega「Pipeline Polluted Gas Leakage Detection in Chemical Parks Based on the Distributed Fiber Optic Sensing Data Fusion Algorithm」(2025年)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.5c03024

